「人気ですね、”広瀬くん"。」

「有紗……」





ひょこっと私の顔を覗き込みながら、有紗はそう言った。




「何か、ファンクラブまで出来ちゃったらしいわよ。」

「ファンクラブ?!」

「うん」




す、すごい……。


そこまで、人気になってたなんて…。




「広瀬の事、好きな人もすごい増えてる。…他校の人もだって。」

「……そっか。」




…そうなんだ。

みんな、勇也の良さに気付き始めちゃったんだね。




嬉しいって言ったら嬉しいけど…、何だか複雑。



頬をふくらましている私に気付いたのか、有紗は私の頭をポンポンとなでる。



「大丈夫よ。由莉なら。」

「………ありがと。」


優しいなぁ、有紗は。




「由莉もファンクラブ入っちゃう?」

「んー…どうしよっかなぁ~?」

「いっそのこと、会長に立候補しちゃえっ!!」

「あはは!それもいいかもね!!」


こうやって、私の元気がない時は、
冗談言って、笑かしてくれるんだもん。




有紗は、私の自慢の親友だ。







「あ、広瀬くん来たよっ!!!」




クラスの中の誰かがそう言い、
私と有紗の会話は中断され、ドアの方に目をやる。



「広瀬くん、おはよっ♡!!」



そう、語尾にハートマークをつけながら可愛く言う子に
勇也は「おはよう」と言って、その子達の前を通り過ぎる。





ただ、それだけで「きゃーっ!!」と言って倒れそうになる女子。




ゆ、勇也の威力、恐るべし…。





勇也はその事に気付いてるのだろうか?





もうクラスのほとんどの女子を倒しながら(?)、
勇也は自分の席へと向かう。



……そう、私の隣の席。







「おはよう」





そう言って、優しく笑いかける勇也。



───どきっ。



と、高鳴る私の胸。



………あぁ、もうこれ。