ずるいずるいずるい。


そんな、手を握って言われたら……。



それに、何?あの顔は!

あんな顔して言われたら…、期待するよ?





勇也も、私と同じ気持ちなんじゃないか、って。

それはないって分かっていても、無理。



勇也は、私が好きなこと知ってるのかな。






チラっと勇也を見ると、まだ私の手を握ったまま俯いていた。




………っていうか、完全に忘れてたけど、
勇也に手を握られているんだったー!!!




さっきまで考えていたことなんて、どこかへ行ってしまい、
私の全神経が右手に集中する。




こ、この手ってどうするべき?!


振り払うの?……でも、そんなの嫌だし。

このままにするの?……それも、何か変だし。



どうしよう、と考えている間に汗が出てくる。


──やばい。このままじゃ手汗が……!





「ゆ、ゆゆ勇也!とりあえず、有紗も待ってるし……帰ろ?」



私があたふたしながら、そう言うと、勇也は私をじっと見た。





そして少し考えてから、「それもそうだな」と呟くと、パッと私の手を離した。



離された瞬間、ホッとする気持ちと、
もっと繋いでいたかった、という気持ちが混ざる。




でも──

「水野。帰るよ。」

勇也がそうやって、振り返りながらほほえむから…


「うんっ!!!」


別にいいかな、なんて思ってしまう。




そして、私は勇也の後ろを付いて行った。










「広瀬 勇也、ね─────…」



西園寺さんが、遠くからそう呟いていたのも知らずに───