裕樹さんはソファから立ち上がってアタシの腰に手を回してくる。
グッと引き寄せられて、アタシは裕樹さんの胸に…飛び込まなかった。

「その手、離せ。聖夜。」
「別にいいだろ。兄貴だけのモノじゃない。」

聖夜さんの腕はあたしの首元に。
裕樹さんの腕はあたしの腰に。
でもって、アタシの手が二人に片方ずつ握られていた。

「あ、あのぉ…。」

アタシは恥かしすぎて声を上げた。
でも、二人はなんかにらみ合ってるし…。
何、コレ。兄弟喧嘩?

「兄貴。俺、美由の事気に入ったんだよね。ペットと婚約解消してよ?」
「それは無理だな。なんたって、コイツは俺のモノだ。」
「キスマークつけただけで?ふーん…。なら。」

裕樹さんの腕の力から解放されて、いきなりアタシは聖夜さんの胸の中。
後ろから抱きしめられてる形になってる。
あぁもう、何が何だか…。
アタシは少し怒りながら真上を見上げた。
次の瞬間。

唇に柔らかい感触。
えーと、これは確か…裕樹さんにもやられた…。

「んむぅ?!」

へ、ちょ、は?!
何でアタシの唇舌でノックしてくるの?!
ってか、長くない?!
窒息死させる気?!

アタシは必死に聖夜さんからのキスから逃れようとする。
足ガクガクしてくるんだけど…。
力はいんない…。

聖夜さんは、やっと唇を離してくれた。
あぁ、もう、泣きそう…。
キスなら、今まで腐るほどやってきたのに。
なのに、今は裕樹さんに見られてるって考えるとかなり辛い…。
何でだろ…。
アタシの頬から、ポロリと涙が落ちた。