先生の苗字は“椎名”で、徹君の苗字は“天海”だ。


「あ…天海…徹君…」


震えた、小さな声しか出なかった。

自分から話題を持ち出したくせにね。



「俺は、椎名、徹や。

ほら、もう授業始まるで?」


私は、すぐに進路相談室を出た。



「…天海…徹なぁ…」

先生がそう呟いたことを、私は知らなかった。