「ちょ、ちょっとまっ」

神太が寸でのところで、顔の前に両手をかざしてそれを止める。

「誤解だよ。俺、おれは、別に付き合ってなんかないよ」

「え。だって、さっきのアレは……」

「してない、してないからっ」

神太曰く。先程、部屋での京輔とキスは、「ふり」で、本当にはしていないという。

それを聞いた途端、廣田は脱力した。

「なんだよそれ。俺、うまくはめられた……」

廣田が自分の髪をくしゃくしゃにしていると、神太は顔を赤らめながら俯き加減に言う。

「あ、あの、それから。俺が女性恐怖症っていうのも、ゲイを隠すためのフェイクだから」

「なるほどな。フェイクだらけだ」

いっそ関心している風に、廣田は頷く。そして。

「じゃあお前、俺のことどう思ってる?」

神太の顎を掴み、上向かせながら聞くと。

「ずっと、好きだったよ」

幸せで潤んだ瞳で、満足な答えが返ってきた。