「何言ってるんですか!?? コレは佐伯さんがこんなになってまで手に入れた情報ですよ!?? オレが書いてどうするんですか!??」
佐伯さんは、またオレに手柄を譲る気だ。
オレへの気遣いなんていらないのに。
佐伯さんと一緒に仕事するの、全然嫌じゃないのに。
むしろ一緒にしたいのに。
いつも傍にいたいのに。
「・・・・・・菊池くんさぁ、こんなになっちゃったワタシに記事を書けと??」
佐伯さんが細い目でオレを見ながら笑った。
「・・・・・・手、無事じゃないですか??」
「鬼畜ですね、菊池くん」
佐伯さんは、自分で記事を書く気はないらしい。
「菊池くん、早く会社戻って。 入稿間に合わなくなる!!」
更に、オレに『帰れ』と急かす。
佐伯さんが命がけで取った情報。
無駄になど出来るハズがない。
「もー!! 佐伯さんの方が鬼畜でしょ!! 時間なさすぎ!!」
「ワタシは、出来ない人には頼まない。 菊池くんだから頼んでるんだよ」
そんな事言われたら、ますますやらない訳にはいかない。
「佐伯さん、口巧い。 ・・・・・・絶対間に合わせますから!!」
もう少し佐伯さんと居たかったけど、仕方ない。
「フッ。 うん。 頑張って」
佐伯さんの笑顔に笑い返して、走って病院を出た。



