「佐伯、時々他人の会話が聞き取れない位の耳鳴りがするらしい」






「・・・・・・・あの、事件のせいですか??」






佐伯さん、いつから苦しんでたの??






「・・・・・さぁ。 佐伯の場合、精神的に厳しい出来事がソレだけじゃないからさ。 佐伯はさ、自分の弱みを見せるのも、気遣われるのも嫌いだからいっつも無理しちゃうじゃん。 菊池くんが異動して来るちょっと前にさ、佐伯が頭抱えて倒れた事があってさ。 それまで誰も佐伯が精神科に通ってる事知らなかったし」






「・・・・・・・」






言葉に詰まるオレの背中を吉田さんが『パシン』と叩いた。






「佐伯の前でそんな顔すんなよ。 佐伯が傷つく」







吉田さんはオレの頭をくしゃくしゃと撫でると、自分のデスクに戻った。






「・・・・・・吉田さんって、お喋りなだけじゃないんスね。 すげぇイイヒト」






「は?? ケンカ売ってんの?? ・・・・オレだって、ココの奴らだってみんな最初は佐伯の事、怖かったし避けてたんんだよ。 あの噂、パンチ効いてるじゃん?? でも、本当の事知って可哀想に思えてさ。 そのうち、みんな佐伯のシゴトの凄さとか、さりげなく助けてくれるトコとかに気付いてさ。 今じゃみんな佐伯に協力的になった」





吉田さんの言葉に、何故か嬉しくなった。







他人事なのにに喜んでいる自分に驚く。