「・・・・オレがもっと早く証拠を押さえられていれば・・・・」
「・・・・・・・・」
声が出ないオレは、目の前で悔しがる名波さんを無言で見つめるしかなかった。
「・・・・・・オレさ、佐伯の父親が逮捕されて、無実を訴えながらパトカーに乗せられる映像をテレビで見て、『この人は本当にやってない』って思ったんだよ。 だからずっと取材してて・・・・・オレがもっと早く佐伯の父親の無実を晴らしてやれてれば、こんな事にはなってなかっただろうな」
違う。 それは名波さんが悔やむべき事じゃない。
「・・・・・・それでも、佐伯は父親の無実が確定した後、1人でオレに挨拶に来たんだよ。 『ありがとうございました』って。 その時『ワタシも記者になって名波さんの下で働きたいです』って言ってさ。 まさか本当に入社してくるとはね」
佐伯さんらしいなと思った。
「・・・・・佐伯の事件があってさ、本当は菊池くんと交換で佐伯を芸能部に異動させようと思ったんだ。 そしたら佐伯、急に『記者辞める』って言い出して」
「・・・・・・・」
それならそれでいいじゃないか。
辞めてもっと安全なシゴトをさせればいいのに。



