「それはそうと、振られちゃったみたいねー、菊池くん」
河野さんが慣れ慣れしく、オレの肩に腕を回してきた。
「はい??」
「名波さんに聞いたんだけど、葉山さんと佐伯さんが寄り戻したって事は、菊池くんが振られちゃったって事でしょ??」
そうだけども・・・・・。
「河野さんが振られたってことでしょ??」
「ワタシはずっと前に振られてるもん」
今でも葉山が社会部に来ると飛びつく様に近づくくらい好きなくせに、あっけらかんと話す河野さんを尊敬する。
「・・・・・・一緒にしないで下さいよ」
「一緒でしょーが。 アンタが佐伯さんの事が好きだった事くらい見てれば分かるっつーの。 みんな気付いてたんじゃん?? ま、淋しがってもしょうがないし、元気だしなさいよね!!」
河野さんが『ドコのおばちゃんだよ』という勢いでオレの背中を『パシン』と叩いた。
そんな河野さんと一緒扱いが嫌だったオレはつい口を滑らす。
「別に淋しがってないです。 今、元カノともう1回・・・・・・」
慌てて口を押さえるも、遅かった。
「見直した!! イイヨ、イイヨ!! その切り替えの早さ!! 若いんだからじゃんじゃんやりなさいよ!!」
まるで佐伯さんの事が本気じゃなかったかの様に言われる始末。
つか、何をじゃんじゃんやれと言うんだ、このヒトは。
あぁ、これからこのヒトの隣でシゴトしなきゃなの??
まじで嫌。
------ブルルル
携帯が鳴った。
着信ではなくメールだと分かっていたが、その場から逃れたかった為『電話だ』と言いながら席を外した。



