「あ、あたし初めては、好きな人とって決めてるんだからー!」

「……」



そこでようやく、ピクリと反応したトワ。
伏し目がちの瞳が、再びあたしの目を見かえした。


「好きな人?」

「そう、そ、そうだよ?トワは違うの?」


そう言ったあたしの言葉に、トワの無機質な瞳が揺れた。

腕を掴んでいた手がそっと離れ、顔を逸らしたトワは「そっか」と小さく呟いた。



……トワ?

空色の髪がトワの表情を隠す。



「じゃあ……」

「え?」

「じゃあ真子はどうしたら俺を好きになる?」

「……へ?」


俯いていたトワが、上目使いであたしを覗き込む。


トクン


子供が拗ねてしまった時のような表情に、胸がギュッと締め付けられた気がした。


「なら、今すぐ俺を好きになってよ」

「……」


話聞いてた?


トワって、子供……。
身体だけ先に大人になってしまったような、そんな感じ。

ストレートな表現とかもそうだけど……。
感情に乏しいって言うのかな。

だから、トワがあたしに何の興味もないのに、こんなふうにキスを迫る事がなんだか悲しかった。