気が付いた時には、口を塞がれていた。


「ん、あれ。寝ちゃったんだ……」

「!!!?」


もぞもぞと起き上がった彼は、あたしに手を伸ばしたまま眠そうに目をこする。
まだどこかあどけなさが残るその瞳が、不意にあたしを捉えた。

それは、目が覚めるような蒼穹。
髪の色と重なって、凄くキレイ…。

真っ黒なシャツを重ね着して、着崩れたそれがやけに色っぽい。
目が合っただけなのに、心臓が飛び跳ねて思わず頬が熱くなる。


うう……。

て、なにときめいちゃってんの、あたし!
苦しい、息できないっ


「……もご、もごご!」

「え、なに?」


無表情のまま、首を傾げた彼の手をガッと掴んだ。
綺麗な顔が歪む。



「むぐ……っぶはぁ!な、なんなの!だ、だ、誰っ」



とにかく、頭がパンクしそう。

だって当たり前みたいにあたしのベッドで寝てて、当たり前みたいに起きて、顔色ひとつ変えないで、あたしの口、塞いでたでしょ!


「い、いろいろとツッコミたいけど、とりあえずあなた何者?場合によっては大声出すから!け、警察だってよ、呼んでっ……」

「うるさい」


面倒くさそうなため息が聞こえたと思ったら、外したはずの手がまた伸びてきた。



わっっ