クイッと手が引かれ、髪をクシャリと持ち上げられた。


そして……唇に、柔らかい感触……。



「っ!」



チュッと甘いリップ音に、フリーズ。


目の前には、伏し目がちのトワ。
放心状態のあたしを見て、トワは悪戯に目を細めると、そのままギュッと抱きしめられた。

あたしを腕に抱いたまま、トワはお店の入り口に視線を向けた。




「邪魔しないでくれる?」



―――


間をおいて、ボンッと顔が赤くなる。
みんな、目がテン。



「あ……、ははは!……ほ、ほら!解散解散!」


しどろもどろになった松田君が、シッシと手を振る。

興味なさそうなカナトくんは、固まっている爽子の手を引いてさっさと帰ってしまい。
あたしよりも固まっていた郁くんとナギさんは、楽しそうな廉次さんが引きずるようにしてお店の中に連れ戻した。




「……」



再び、あたしとトワのふたりきり。

耳が痛くなるほどの心拍数と、静寂。


それでもトワの腕が解けることはなくて……。



「ほんと、空気読めない人達」



そう言って、呆れたようにため息をついた。
結局抱きしめられちゃったあたしが腕の中でジッとしていると、トワが不思議そうに覗き込む。


そして……。



「ーーね、真子。俺の家においでよ」



掠れた声でそう言ったトワが、耳たぶを甘噛みしたもんだから……。

もっと顔を上げれなくなってしまった。


ひえええええ……。