正宗さんは、「いいえ」と目を伏せた。


「それは少し違いますね。 他のみなさんが見たのは、貴方方の中にある物の怪達のものです」

「はあ?んだそれ」


わけが分からないと眉間にシワを寄せたカナトくん。
爽子も松田君も、郁くんもお互いの顔を見合わせた。


「どうですか?みなさん、なにか感じませんか?」

「……なにかって……」


そう言って、俯いた松田くんはそのまま押し黙ってしまった。
するとすぐに声を上げたのは、爽子だった。


「……喪失感がね?……あるの。 もう二度と戻ってこない、そんな気がする」


ポツリと確かめるように言ったその言葉。
郁くんも自分の胸に手を当てて、小さくうなずいた。


「僕も……ない気がします」




そう言えば、とみんなが押し黙ったところで、正宗さんが立ち上がった。




「さあ、準備をしましょう」


―――準備?


「準備って、何のだよ」


ウザったそうに大きなため息を零したカナトくん。
正宗さんは、ニコリと微笑んだ。





「楔が解けた、お祝いの宴です」