『ああ、やっと会えた……』

「え?」

『ずっと、ずっと待っていました――』


そう言って、愛おしそうに目を細めたのは、約束の猫。
蒼穹の毛並み。猫はあたしの頬にその小さな頭をすり寄せた。



『貴女にお伝えしたい事がありました……』


目が見えていないの?

猫はあたしの顔を見ていない。


「……っ、なぁに?」

あたしは嗚咽まじりになりそうな声を、必死で押さえて笑顔を作る。


『これを』


そう言って猫が差し出したのは、真っ青で、とても綺麗な石。

震える手でそれを受け取ると、猫は嬉しそうに、満足したように目を細めた。


『月の光で作ったもの…です……。貴女への想いを込めまし、た』

「…うん」


猫の息が、消えていくのがわかる。
ダメ、もう少し……。

もう少しだけ待って!

猫から受け取った石ごと、あたしは腕に力を込めた。




そして、蒼穹の猫は、その瞳に星を宿しながら、微笑んで。


『私は、ずっとずっと……
貴方をお慕いしておりました』



そう言った猫の瞳から
一雫の、涙が零れた……。


あたしはギュウとその猫を抱きすくめる。

胸が熱い……。
頭がボーっとする。

これはあたしの意志?

それとも……。
この猫の想い人の気持ちだろうか。



「うん、うん……ずっと、待っていてくれたんだね……」



―――ありがとう……。