あそこで倒れているのは……猫?
蒼穹の猫は、ピクリとも動かない。
恐る恐る歩み寄ると、夜露に濡れた、艶やかな毛並みがだけだ光っていた。
「……あ、……」
急に膝に力が入らないくなる。
ストン……と草の上に膝から落ちて、そっとその猫を覗き込んだ。
あたしの手をずっと離さないでいてくれたトワの姿が、どこにも見当たらない。
「そんな……」
震える手で、そっと小さな体を抱き上げた。
ヒンヤリと冷たい。
まさか、この猫がトワなの?
やだ……やだよ……。
どうして? どうしてなの?
なんなのこれ……!
「トワ!どこにいるのっ?」
愛おしい姿を求めて、思わず天に向かって叫んだ。
と、その時だった。
腕に抱いた、猫がかすかに動いたのは。
ハッとして、視線を落とすと、眠ったように目を閉じていた猫の瞳が、ゆっくりと持ち上がった。
「よかった……、トワ?」
勝手に溢れる涙が、視界を邪魔する。
ジッとあたしを見上げたまま、蒼穹の猫は震えるような瞬きをした。