――カタン。


「……」

トワ?

暗闇の中、見覚えのあるリュックが見て取れた。

でもそこにトワの姿がない。


あれ?


「…トワ?」


思わず声を上げたその時。
奥から月のように輝くふたつの光が姿を現した。


「……」

「よかった……」


ちゃんといた。

トワも寝てたんだろうか。ゆっくりとあたしの前まで来ると、ちょこんと座った。


ーー全然よくないよ


まるでそう、言ってるみたいパタリとシッポを振ったトワ。


「ね、今なら少し出ても平気だよ?外行く?」

「……」


出来るだけ声を押し殺してそう言うと、しばらく考えるようにあたしを見つめていたトワはフルフルと首を振った。


「寒いし、いい」

「でも、ずっと押し入れの中にいたし……」


ちょっとは気分転換を……。

なんて思ってると、トワは小さなその前足をあたしの膝の上に乗せて、目を細めた。


「なら、真子の布団に入れて」

「え?」


猫トワはあたしの答えを待たずに、さっさと布団の中に潜り込んでしまった。


……ま、いっか。
もうすっかり秋も深まっていて、京都の夜は寒いよね。

ゴロゴロとうずくまる猫ちゃんを見てたら、心の中がふわりとあったかくなった。