「今日途中で具合悪くなっちゃったんでしょ?」
「具合……」
あ、そっか……。
トワがいないのは、急な発熱って事になってるんだった。
トワなら、そこに……。
瞬間、重大な事を思い出して、ガバッと上半身を起こした。
「え、どうしたの?」
そうだった!
と、トワ……いる?いるの?
「ん?……んーん。なんでもない。そうなの。具合悪くてね?だから今日は様子みて違う部屋に泊まるって」
いるよね、トワ?
ああ、もう。こーゆう時にテレパシーみたいなの出来たらいいのにっ。
クラスメイトに笑顔で答えつつ、あたしの意識は背中の押し入れに向いていた。
「そっか。今日は残念だったね……。あー、てことは調子悪いんだし、彼女の部屋訪問なんて無理だよね~。突然藍原くんが訪ねてくるかもって期待してたけど、残念」
「あ、はは……」
そこにいるんだけど……。
引きつった笑顔を向けて、気付かれないようにため息をついた。
「じゃあ、消すよー」
「おやすみ~」
パチ!っと電気が消えて暗闇に包まれた。
開け放たれた襖から、青白い月明かりが部屋を柔らかく包み込んだ。
……。
…………。
寝れない……。
みんな寝静まってから、どれくらいたったんだろう。
枕元に置いてあった携帯を確認すると、すでに深夜0時を回ろうとしていた。
窓の外から、微かに虫の声がする。
それから、友達たちの気持ちよさそうな寝息も。
……、もう大丈夫かな……。
あたしはひとり、ゴソゴソと布団を這い出ると、そっと襖に手をかけた。



