人気のないロビーの一角。
腕を組んで、ドカリとソファに腰を落とす総司朗先生が、その鋭い眼差しをギロリと細めた。
「どうなってるんだ」
もちろんあたしの腕の中には、トワが入ったリュックがあるわけで。
先生の視線の先は、トワだ。
空色の猫ちゃんは、ひょっこりとリュックから顔を出して、ムスッと言った。
「俺が聞きたい」
「……はあ。俺の部屋は他の先生もいるからな。猫のお前を預かるわけにもいかんし。かといって外にも出しておけん。飯はなんとかなるとして……。もし戻れなかった時の寝る場所だが……」
そう言って、先生はチラリとあたしに視線を移した。
……え?
「立花。このままお前がかくまえ」
「ええっ!む、無理ですよっ。他の女の子もいるんですよ?」
「押し入れにでも入れておけばいいだろう。お前が近くで寝ていれば万が一夜中戻っても対処しやすい」
「対処って……」
真夜中に女子の部屋にいたら、絶対変でしょ?
トワの体質が、怪しまれちゃうよ……。
戸惑っているあたしを横目に、先生はしれっと言った。
「夜這いにでも来ていた事にすればいいだろう」
へ?
「バレた時は俺が何とかするから安心しろ。その方がいたって健全だ」
「ちょ、」
わけが分からず固まっていると、リュックの中からトワはため息まじりに言った。
「ほんと、いい加減……真子、行こ?」
そんなああああ!



