「ひゃああっ」
驚いて、小さく飛び上がったあたしのすぐ後ろで、手を出したまま固まっているのは、松田くんだった。
「ど、どうした、立花?」
「え?あ……うんん、びっくりしただけ」
「っはは。ビックリしすぎ」
「あはは……は」
トワが気になって、みんなとは少しだけ距離を置いて歩いてたあたしにを心配して、松田君が声をかけてくれた。
その優しさに、トワの事を言ってしまいたい。
絶対、松田君知ったら助けてくれるのに……。
「ん?何?」
「うんん、なんでもない」
思いのほかジッと見つめていたらしい。
松田君が、不思議そうに首を傾げた。
せっかく鈴虫寺に来たんだから、ちゃんとお願い事しなくちゃ。
お賽銭をチャリンと投げて、あたしは静かに手を合わせた。
――トワが、無事に元に戻れますように……。
でも、その日はいつもと違って。
なぜかトワの体が人間に戻る気配がなかった。
トワの不在は、総司朗先生によってみんな不審に思う事なく、修学旅行も2日目の夜を迎えていた。



