「あ、あの。もしもし先生?あたし、立花です」

『……なんだ』

「あ、これトワの携帯からなんですけど」

『知ってる。要件はなんだ』


こ、怖いよ先生~。


「えっと、あの今突然雨が降ってきちゃって。それであの、トワが……」

『……お前、今どこにいる』


少しの沈黙のあと、そう言った先生。
あたしの言いたい事、すぐにわかってくれたみたい。


「今、化野念仏寺です」

『……はあ。俺は今旅館にいるから、お前たちのいるところまでは迎えに行けん。猫一匹何とか隠せ。それくらい出来るだろ』

「え?で、でもっ」

『鞄に入るだろ。戻るタイミングは自身でわかるんだから、その時鞄から出せ。いいな』


先生はそう言うと、さっさと電話を終わらせてしまった。

機械的な電子音が虚しく響く……。




「……嘘でしょ……」

「総司朗、なんて?」


トワが、腕の中から遠慮がちにあたしを覗き込んだ。


「……鞄に、隠れろって」





「―――は?」