ガバッと空を見上げると、パラパラと小さな雨粒が落ちてきて。
あたしの髪や、頬を濡らす。


ちょ、こんなとこで、雨なんか降ったら……。


やばって思った矢先。
目の前で「ポン!」って聞こえたかと思うと、真っ白な煙の向こうから、空色の猫が姿を現した。


「……ど、どうしよう、トワ」



空色の猫は、散らばった服に埋もれるようにして、チラリとあたしを見上げた。


「……ごめん、真子」

「……」


雨は次第に強くなってるようだ。
笹の葉を伝い、その雫がポロポロと零れ落ちてくる。

それは、トワの空色の艶やかな毛並みの上で弾けた。


はっ!

ボーっとしてる場合じゃない。
あたしがなんとかしなくちゃ。


とりあえず、パッと服をかき集め、猫トワの小さな体を抱きかかえた。


「とにかくみんなに見つかる前に、先生のところに行こう?そしたら、きっと何とかしてくれるバスだよ。松田君がすぐそこにいるから、手伝ってもらって……」

服で隠すように、トワを抱きしめて木陰から出ようとしたとき、腕の中のトワが身じろいだ。


「アイツには言わないで」

「え、アイツって……松田くん?」


首を傾げると、トワは黙って俯いた。


「でも、言っておいた方が、」

「総司朗に電話して。俺の携帯がズボンのポケットに入ってるから」

「……う、うん」


すぐそこにいるのに。
少し先で傘を広げてる松田君の姿が見えた。

言われた通りに、先生に電話をかける。

数コールで先生の低い声が聞こえた。