そこにいたのは、触れたら凍ってしまいそうなほど冷たい目をした、総司朗さんだった。


「や、やだなぁ、総ちゃん。僕はただ、可愛いふたりが困ってたら、大人の助言をだねぇ」

「余計なお世話だ。だいたいお前の助言なんて誰も欲しがってない」

「ひどいっっ」


ガーンと胸を打たれた仕草でよろめいた廉次さん。
それを冷ややかな目で一貫し、総司朗、先生はあたしに視線を落とした。


わ!怒られる?

茫然と突っ立っていたあたし。
いきなり先生の視界に捕えられて、慌てて背筋を伸ばした。


「立花」

「は、はい!」


低くて、鼓膜を揺るがす声があたしを呼ぶ。
たまらずキュッと目を閉じた。

それから先生が、小さくため息をついた気配がした。

うわわ!


「助言が欲しいなら、俺に訊け」


へ?

ある程度の冷たい言葉を予想していただけに、拍子抜け。

パチッと目を開けてマジマジと先生の顔を見つめてしまった。



「……間違っても廉次に訊くな。コイツの言ってる事の半分はふざけてるからな」

「は……はい」



きまり悪そうに、フイッと視線を外した先生。
先生なりに、心配してくれてるんだとわかって、胸の中が優しい気持ちになった。


「ところで、藍原は?今日はこねーの?」

「あ……トワは、もしかしたら来られないかもって」


いつの間にか隣に並んでいた松田くんがそう言って、ゴクッとグラスを傾けた。


「ふーん。で、郁が呼びに行ってる訳だ」

「郁くん?」


松田君の言葉に、改めて店内を見渡すと、たしかにそこには郁くんの姿はなかった。