「今度の土曜日。お店に来てほしいって廉次が」
「へ?」
れ、廉次さん?
「よかった。思い出して」
「え?」
嬉しそうににっこりと微笑んだ、トワ。
長い睫が、ふわっと細められてポケットの彼の手があたしの頭に乗っかった。
「俺行けるかわかんないけど、ほらあの友達とかも呼ばれてるみたいだから」
「爽子?そうなんだ」
土曜日ね。夏休み初日だね。
特に予定もないし、よかった……。
「って、そうじゃないよ!」
「え?」
今度はトワが目をぱちくりとする番。
垂れ目がちの瞳を見開いて、あたしの髪を丁寧撫でていた手がピクリと止まった。
驚いたその瞳が、「なにが?」って言ってる。
言わなきゃダメ?
あたしからはっきりと口にしなくちゃダメなの?
「~~、もぉ、いつもなら勘違いでトワが言うハズなのに」
「勘違いって何が?」
ほんと、鈍感なんだから!
下心ばっかりの真っ赤になったあたし。
鈍くて、ずるくて、こんなになったあたしを前にして、とぼけるトワ。
悔しいよぉ。
唇を噛みしめて、キッと顔を上げた。
「キスしてって意味だよ!」



