どういう事だろう……。

廉次さん、いつもと違ったな……。



十二支……。
猫憑きのトワと、鼠憑きの廉次さん……。

ふたりの間には、目に見えない何かがある気がした。


胸の中で何かが引っかかる。

あたしはきっと何も知らされていない。
もっと、根深い何かを。

知らなくてもいいんだろうか。
あたしは、トワの……お嫁さんなんだよね?


前だけを見て歩くトワの後ろ姿。
柔らかな空色の髪が、夕陽に照らされて黄金に輝いている。




一方的に掴まれていた手を、あたしは思い切って引っ張った。

そこでやっと我に返ったみたいに、トワが振り返った。


「ごめん、歩くの早かった?」


そう言ったトワを見上げて、フルフルと首を振った。


「トワ、教えて欲しい」

「何を?」


真っ直ぐにあたしを見下ろしたトワの瞳が、無言で“知らなくていい”って言ってるみたいで少しだけ躊躇してしまう。

―――それでも。



「トワの知ってる、猫憑きの事。あたしに教えて?
あたし、知りたい。……トワの事、もっと知りたいの」

「……」


蒼穹の瞳が、にわかに細められた。