「……」

「……」



沈黙。

静かなジャズの流れる店内には、あたし達だけ。
なぜか郁くんとトワに挟まれるようにして座るあたしは、小さくなって俯いた。


触れそうで触れない、トワとの距離。

そのもどかしさに、今のあたし達を象徴してるようで泣きそうになる。


唇をキュッと噛み締めたその時、スッと席を立ったのは郁くんだった。



「トワくん僕先に行ってるね。真子さん、それじゃまた」

「あ、うん。またね」



律儀にペコリと頭を下げた郁くんに、小さく手を振り返した。


そして2人きり。
ソファに並んで座るトワは、何も言わないままで。

色々話したい事あるはずなのに、どれもこれも言葉となって口から出てきてはくれない。


うう……。

でも何か、何か言わなくちゃ……。
せっかくトワに会えたのに。


「あ、あの……あのね、トワ」


意を決して顔を上げた、あたしはそのまま固まってしまった。

だって、だってトワが……。
真っ直ぐにあたしを見つめていたから。

息をするのも忘れそうな程、綺麗な蒼穹。

その瞳が、ユラユラ揺れている。

あたしを捕えて、目を細めたトワ。


なに?って言ってる気がして、無性に恥ずかしくて。
自分からキスしたくせに、目が合うだけで緊張するなんてあたしってどうかしてる。

一気に喉が乾いて、それをごまかすようにゴクリと無理矢理つばを飲み込んだ。



「あのさ、真子」

「え?」


先に口を開いたのは、トワだった。