「へえ、そんな事が……。て、真子ちゃん頑張ったんだね!」

「頑張ったのに、あやふやだよ~」


爽子に誘われて、あたしは廉次さんのお店に来ていた。
なんでも、新作の美味しいケーキがあるんだって。


トワに自らキスをするという、失態をさらしたあの夜からすでに2週間。
時が流れるのは早いもので、あっという間にあの日は遠くなる。

季節はすっかり春らしくなり、桜の花は新緑を迎えていた。

時間だけが流れ、あたし達は何も変わらない。





「うーん、藍原くん何考えてるんだろうね。どこからどう見ても、真子ちゃんの事好きで好きでしょうがなーいって感じなのに」

「……」

「約束の相手は真子ちゃんなんだし、何を迷ってるのかな、藍原くん。ああもう、じれったい~」


まるで難題を抱えた探偵みたいに、腕を組んで首を捻った爽子。

爽子も知らないみたい。

もしかしたら、三國家や藍原家の物憑きが関係してるのかもって思ったけど。
違うのかぁ……。


「あたし、どうすればいいのかな。自分の気持ちに気付いちゃった以上、今までと同じなんて無理だよ。トワが、変わらなくても」


だって、好きだもん。



時々機嫌悪いなーって思う時もあるけど、ふたりになればそんな事ないし。
たぶん、松田くんがトワで遊んでるのが原因だと思うけど。



「はあああ」
「はあああ」


ん?