「立花。とりあえず、場所を移動しよう。ここで元の姿に戻る方が困る」

「あ、うん」


ギュッとトワを抱き上げて、立ち上がった。
爽子が、足元の衣類を集めて、トワの体を隠すようにあたしの肩を抱いた。


どうしよう……。

誰かに見られたりしなかった?

でも、トワ、どうしてあんな事したの?


胸が痛い。モヤモヤして、苦しい。


無意識に腕に力が入って、胸に抱く猫トワが身じろいだのが分かった。










とりあえず人気のない場所まで移動すると、全員がはあとため息をついた。

ここまでで誰かに引き止められたりはしてない。



「あー、びっくりした。あんなに水が飛んでくるなんて思わなかったねぇ。おかげでビショビショー」


そう言った爽子は、着ていたロングスカートを気持ち悪そうに持ち上げた。


「ま、みんなシャチに気とられてて、俺たちの事は気が付いてないみたいだし、とりあえずはよかったよな。ほんと、俺も濡れた」


湿った髪を掻き上げた松田くんは、ニコリと笑った。


「……」


確かに。
パッとまわりを見渡した時、みんなプールを見てたり、濡れてしまった事に気を取られてるようだった。


でも……。



「真子は平気?」



腕の中のトワが、伺うように見上げてくる。