「いってらっしゃーい」

「行ってきます」



玄関から見送ってくれる母の言葉の語尾に、ハートマークがついてる気がする。

吐く息も白い、真冬の2月。
口元をマフラーでグルグルと覆ったままその姿をジロリと見て、ため息をついた。



「……。学校も行くの?」

「あたりまえでしょ」


紺色のブレザー。
深緑のタイタンチェックのズボンに身を包んだ、トワがしれっと言った。
淡い水色の髪が、彼の歩くリズムに合わせふわふわ揺れている。

その様子を眺めながら、あたしは深くため息をついた。



「あの……同じ学校にかようにしても、トワってどう見ても年下……」

「見た目で判断しないで欲しいね」

「……」


なんか言葉に端々にトゲが……。
なんなわけ……。

お母さんと話してた時とはまったく違う雰囲気のトワ。

冷たいって言うか、キツイって言うか。
仮にもあたしをお嫁さんにもらいに来たんでしょ?
だったらもっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?

たとえばもっとゆっくり歩くとか!


背の高いトワは、どんどん先に行ってしまう。
あたしと言えば、ついて行くので必死だ。


はっ!そもそもついて行かなくったって、別にいいじゃん。
あたしには関係ない……。




「真子」

「は、はいっ!」