「所長!駄目です、出力上がりません!」

「点検班はどうしたんだ!」

「報告には“異常なし”……と」

「――やりやがった」

やけに大人しくなった草川昇所長は、握りこぶしに力を込めて横文字の名前を呟いた。
助手の八木美智子はその名前を胸に刻んだ。

二人共、動かなかった。

非常を警告するサイレンが鳴り響く中、オペレーションルームに絶望を集めた職員たちもじっと、不安を隠せずに草川を見つめていた。