未奈(みな)は、届いたダイレクトメールに目を遣りながら、戻らない月日へ思いを馳せる。


 いつかの春。朝日を見に行こうと、未奈を連れ出した幸(ゆき)が、「やっぱ、春はあけぼのだろ?」なんて、自慢げに枕草子をなぞったから、未奈は夏の日、「夏は夜でしょ?」と夜空を見ながら、幸に微笑んだ。

 秋の日は夕暮れ時をふたりで歩き、思ったものだ。
 昼とも、夜ともつかないこの時間が、まるでふたりの関係を表しているよう、と。

 そして、冬の早朝。

 訪れた雪は、全てを白く染め上げた。

 雪はどこまでも綺麗で、美しくて――未奈はただ、その事実を受け入れた。