ジュンク堂書店の、文芸コーナーをぶらついていると、原田宗典先生の新刊を見つけた。1冊だけ、ひっそりと、それは棚にささっていた。


新潮社「メメント・モリ」原田宗典


なんともいえない複雑な感情を胸に抱きながら、ぼくはその本を買った。



ぼくが小学生の頃にはまったのはは、「ズッコケ三人組」シリーズだったが、中学、高校の青春時代にのめりこんだのは、原田先生の作品だった。最初に読んだのは、確か「海の短篇集」だったと思う。海を舞台にした不思議な話を集めたもので、かなり面白かった。



次に読んだ「東京困惑日記」は衝撃だった。まさか読書で、こんなにも腹がよじれるほど笑えるとは思わなかった。そのあとも、「スバラ式世界」「吾輩ハ苦手デアル」「十七歳だった!」「買った買った買った」といったエッセイ集を、かたっぱしから読みまくり、大爆笑した。笑いすぎて鼻血が出た。



小説も素晴らしかった。「十九、二十」「スメル男」「平成トムソーヤ」。作者本人のぶっちゃけトホホ話とはちがった、味わい深い人間ドラマに感動した。マイベストは「しょうがない人」だ。借金で家族に迷惑をかけた父親との確執(実話)をまっすぐに描いた短編に、ぼくは素直に泣かされた。