「好きな女優は、中谷美紀と三輪ひとみです」
と言うと、だいたいこう聞き返される。


「三輪ひとみって誰?」


んー、まあ仕方ない。あんましメジャーな女優さんじゃあないからねえ。


ぼくが、三輪ひとみを初めて見たのは、江戸川乱歩原作の映画「D坂の殺人事件」でだった。監督は実相時昭雄、主演は真田広之。


三輪ひとみはこの映画の中で、明智探偵の助手の小林少年の役を演じていた。


これが……、色っぽかった。


宝塚の男装のような華やかな雰囲気とは違う、どこか暗い背徳的な美が、彼女の学生服姿に備わっていた。
彼女の妖しい笑みに魅了され、ぼくは一発で彼女のファンになった。


「この女優は、将来化けるぞ」
と確信した。


そして数年。その確信は現実のものとなった。ぼくの予想外な方向で。


きっかけはあの映画だ。
「発狂する唇」。
監督、佐々木浩久。
ぼくが今まで見てきた映画の中で、一番最低な映画だ。あらすじすら語りたくない。一応ホラーだそうだが。見終わったあと、ビデオテープを叩き割りたくてしょうがなかった。(レンタルなんで我慢した)


で、この映画の主演女優が三輪ひとみさんだった。


彼女は、この最低な映画の最低な役柄を見事に演じきった。最低な濡れ場をこなし、最低なミュージカルシーンを歌いきり(曲はなぜか演歌)、最低な格闘アクションシーンを戦い抜いた。


で、映画への怒りとは別に、ぼくは三輪ひとみという女優にますます惚れこんだ。こんな最低な映画でも、しっかりとやりきった彼女に、凄まじいプロ魂を感じた。
以前紹介した「嫌われ松子の一生」とは別の意味で、


「生半可な女優じゃできねえよ、この役」
と思い、三輪ひとみという女優を尊敬した。