「紗枝子・・・・貴志くんは大事な試合を抜け出して今日ここに来たんじゃ


お前の婚約パーティがあるって友達から聞いたらしい・・・・ホテルの受付で



言い合いしているところをわしが偶然通りかかっての・・・子供のころしょっちゅう



お前と遊んでいたからすぐ貴志君だとわかったよ、図体が大きくなっても顔立ちが



あのころのままじゃからの・・・」




「おじいさま・・・・」



哲さんはいとおしそうに紗枝子さんの髪をそっと撫でた



顔からはさっきの怒りに満ちた表情は消えていて孫を思いやるおじいさんの顔になっていた



「蓮君と婚約なんて言い出したのはどうせお前のほうからだろう


おそらく莉子ちゃんを使って脅してうんと言わせたんじゃろ・・・・



周りが甘やかすからなびいてくれない蓮君に腹をたてた、まあそんなところか?


だが、このまま結婚なぞしたら蓮君と紗枝子は不幸になるぞ!お前は他の女を



思ってる男と一緒になって幸せになれるのか?結婚なんてものはお互いを思い合って


いて、愛し合っているものがするものじゃ・・・だからこそ苦労も乗り越えて行ける」



そう一気に話すと哲さんは紗枝子さんの肩を叩いてにっこり微笑んだ



紗枝子さんも哲さんに笑顔を向けた




その顔はいままでにないくらい晴れやかで穏やかな顔をしていた



「でも、おじいさま・・・・婚約を取り消すなんてことは今から不可能なんじゃ・・・」



「なに?そんなことを心配しとるのか?いいからここはわしに任せなさい


蓮くんは莉子ちゃんを病院へ・・・・」




そうつぶやくと哲さんは深々と頭を下げた



「莉子ちゃん・・・・たぶんその傷もあの子のせいなんだろ?すまないことをした

謝ってすむことではないかもしれないがこのわしに免じて許してくれないか


蓮君も紗枝子のことを許してほしい・・・・」



哲さんの謝罪の声が胸に響いて仕方がなかった


やっぱり孫の紗枝子さんが可愛いんだ・・・・そう思って胸が温かくなる


あたしにもこんなおじいさんが欲しいな



そんなことを思いながら頭を下げる哲さんを見つめた