立花は主砲車両前で遺体の回収を完了し一休みしていた十河と赤松を尋ねた。

 二人は遺体と共に回収した敵の銃を集めて満足そうに露店を開いていた。

十河
「大将、俺たちゃ砲撃手っすよ、敵兵専門の葬儀屋じゃないぜ」

赤松
「そうだ、そうだ、我々は決して権力には屈しない」

立花
「死体をほっといたらゴブリンが寄るし、疫病も発生するからしょうがないだろ。
 
 武器は軍の物だから勝手に売るなよ」

十河
「戦争は儲かるって話だったすけどねー」

立花
「よく分かってるじゃないか、但し儲かるのは極一部さ」

赤松
「権力者どもめー」

立花
「儲けようとするのはいいが次の作戦を説明したい」

十河
「あの特殊な弾使うんすか?」

立花
「そうだ、お前達に限って外す事はないと思うが、失敗すれば確実に死ぬ事になる」

十河
「誰がっすか?」

立花
「主砲車両の乗組員かそれ以外全部だ」

十河
「俺達にかけるんすか?」

立花
「ああ、俺の一存で俺と乗組員の命を預ける」
 
 立花の真剣な目を見て十河は立ち上がった。 

十河
「俺達が命令を無視するのも、持ち場を放棄するのも、全部上官が間抜けで嫌いだったからです。
 
 でも大将、あんたは違う。
 
 こんな見た目の俺達の腕を信じてくれた。
 
 それに誰より働いてるのも分かってる。
 
 赤松だってそうさ、俺以外の奴を持ち上げる事なんて今までなかった。
 
 そうだろ赤松?」

赤松
「大将はいい奴だ」

十河
「これからは俺達の腕も命も大将、あんたの好きなように使ってくれよ、俺達が全員救ってみせまさー」

立花
「今の言葉は百の兵士より心強いな、報酬として三丁までだぞ」

赤松
「一人三丁ですか?」

立花
「ああ、後の銃は鍋島に渡しといてくれよ」

十河
「さっすが大将、わかってんなー」

 立花は二人に指揮車で要塞襲撃作戦の説明を行った。

十河「確かにこいつは責任重大すね、まじ俺達死ぬんじゃないっすか?」

赤松
「あにい、これはエキサイティングですな」

立花
「必ず助ける」

十河
「信じてますよ」

赤松
「連結器は俺がやっていいすか?」

十河
「じゃあシートは俺な」

立花
「イメージトレーニングでもしといてくれ」

十河
「おっしゃ、行くぞ赤松」

赤松
「楽しみだなー」
 
二人は楽しそうに出ていった。

佐竹
「本当に良いんですか?彼等が失敗したら大損害ですよ?」

立花
「覚えてますか?黒田さんに人員の件で文句言った事あったでしょ?」

佐竹
「ありましたねー」

立花
「あの後に聞いた話なんですけど、火龍の主砲は箱根で昔から使われ続けた重要な戦力だったんですよ。

 それを途中からあの二人が使う用になった話しがあるんですよ。

 北方の戦争より前に。南のポリスに海賊が現れた事があったでしょ?」

佐竹
「ええ、大型船で海岸沿いを荒らし回ってたって奴でしょ」

立花
「南方ポリスを防衛する為にあの主砲が他の砲と一緒に海岸沿いに配備されて敵の戦闘艦の艦砲射撃とやりあったんですよ、激しい戦いらしかったんですけど敵の五隻の船は全部沈められたって」

佐竹
「あの二人もその戦いに?」

立花
「そうなんです。

 でも戦闘の後、残弾数を確認したらあの二人だけ全然撃ってなかったみたいで、当時から早撃ち自慢の二人にあの主砲を任せた上官はえらい怒ったらしいんです」

佐竹
「そりゃ怒るでしょうね」

立花
「ここからは黒田さんに隠蔽されたんですが、実は不服を申し立てて暴れた挙げ句、軍房に入れられた二人の復讐を恐れて手柄を横取りした他の砲兵が当時の内部調査部の森君に証言したらしいんですよ。
 
 彼等が五隻全て沈めたってね
 
 しかも撃った弾数は七発、潮風が強く、急ごしらえで土台が不安定な要塞から遠くの海に浮かぶ標的をたった七発で」

佐竹
「それは凄いですね、でも何故黒田さんは隠蔽を?」

立花
「手っ取り早く引き抜く為に隠したらしいですよ。

 その見返りに森君がすぐ釈放して、黒田さんが仕事を回したんですって」

佐竹
「やりそうだなー黒田大佐なら」

立花
「彼らは本当に天才なんですよ、弾道学も物理学も何も知らない、空間把握能力を超能力の一つだと思ってるような二人ですけどね」

佐竹
「天才っていうのは分かるんですが、だからそういう所が不安なんですよね」
 
 外から二人の声が聞こえてきた。

赤松
「だからバーっていったらドンっすね?」

十河
「ばか!違うってグルーってなってズドーンだって」

赤松
「ああBパターンすね」

十河
「ああん?ああ、まあな」
 
 佐竹は不安そうに立花を見た。

立花
「大丈夫!多分」