** 小春の物語 **【完】









俺は、思っている事をズバッと言った。


すると、さっきまで真剣だった女の顔が
いきなり歪んで……



一筋、二筋と涙がつたっていった。



おい。待て待て…俺が笑ったからこいつは泣いてるのか!?


それとも、こいつにとって、そんな嫌な言動を俺は発したか!?


こいつの心が全く読めない…。


そう思った俺は、単刀直入に聞いてみる事にした。




「おい、なんで泣く必要がある?」



『…えっ……、あ、ほ…本当だ…。

いえ…あまりにも神崎さんの言葉が嬉しくて…つい……。


本当に、有難うございます…。』



___なるほど。
こいつは、嬉しくて泣いたのか…

そう言われてみれば…

それは、そうだな。


今まで、除け者扱いされていたのに、
いきなり“正論”を言ったからだろう。



本当に、
こいつは、偽りのない…
純粋で素直な女だな……。



いつの間にか、そう考えていた俺は、
自分の思想に驚いて、なんとか、それを隠そうとした。



「ああ…。もう、礼はいらん。

それより、
そろそろ執事が迎えに来るから…
中に入るぞ?」



『はいっ!!!』


そう言った直後に、
俺の事を探し回っていた執事が来て、
“中に案内するように”と伝えた。