「いってえー。」
いきなりのことで頭は真っ白。
自然と体は凍りつき、その場から動けずにいた。
「あ?」
目線の先には、なぜか矢野先輩。
そして座り込んでいる。
痛そうにひじをさすりながら、こちらを見ている。
というより、がん飛ばしている。
やばい。
一瞬でその状況を理解した。
角を曲がったとき、急いでいて前なんて見ていなかった。
その結果、前からきた人にぶつかる。
そして運悪く、ぶつかった相手が
矢野先輩
これは、最低最悪の大失態。
この学校で気を抜ける場所なんて一つもないはずなのに…
前を気にせずに走ってしまった。
「何見てんだよ。」
我にかえった私は、矢野先輩をじっと見続けていたことに気づく。
「す、すみませんでした!!」
とっさに立ち上がり、一目散に逃げた。
いや、逃げようとした。
私は腕を掴まれ、逃げることは許されなかったのだ。
恐る恐る振り返る。
すると、矢野先輩がじっと見つめてくる。
