「冷たいなあー。ちょっとこっちで歌おうよー。」
空いたグラスを片付けようとしていると、グイグイと腕を引っ張ってきた。
酔っ払いは本当にいやだ。
だけど、そんなことは言ってられない。
丁寧に対応しなきゃ。
「申し訳ありません。仕事中ですので…。」
酔っ払いだとしても、お客様に変わりはないから。
「そんなかたいこと言わないで、ほら。」
力が強くて振りほどこうにも、全くびくともしない。
どうしよう……
そう思っていたその時。
ガチャッと扉が開く音がした。
「お客様ー。ここはそういうお店ではないので、ご遠慮くださーい。」
強い力で後ろにひっぱられ、酔っ払いから離れることができた。
そして、聞き覚えのある懐かしい声。
そのまま部屋から出されると、すぐに助けてくれた人の顔を確認した。
「うそ……」
もしかしたらとは思ってたけど……
聞き覚えのある声だって思ってたけど……
