わかりやすくしてたつもりはない。
けど…
片岡に対しては、多少そういう素振りを見せてきたつもりだった……
「藤は、ずっと柚だけを見てたよね。」
そう言ってニコッと微笑む。
改めてそう言われると…
なんか照れくさい。
高校一年の夏休み。
フェンス越しに大勢の生徒が、サッカーの練習試合を見にきていた。
片岡も、その中の一人。
俺は一年の時、すでにメンバー候補にあげられていて……
ベンチで応援している一年の仲間と、試合前に話している時。
片岡の存在をはじめて知った。
「おい、あの子可愛くね?」
「どれどれ?」
みんなの視線が、その可愛いという子に集まった。
「あー、宮野さんだろ?」
みんなが可愛いと言っていた女の子。
それが宮野優希。
可愛いと評判らしくて、知っている人も多かった。
ベンチは宮野の話題一色。
しかし、俺はなぜか宮野ではなく。
その隣りにいる女の子に目がいった。
