「片岡。」
優希がいなくなって一人で座っていたら、横から私を呼ぶ声がして。
その方向を向くと、立っていたのは、
藤くんで。
驚いて、とっさに顔をふせた。
「あのさ…」
少し寂しそうにも聞こえる声。
藤くんは、私の横に座りこむ。
そして壁にもたれて言った。
「さっき言ったこと、気にしなくていいから。」
思ってもいなかった言葉に、驚いて顔をあげた。
すると空を見上げていた藤くんは、照れくさそうに私の方に顔を向けた。
「俺さ、片岡と話せなくなる方が嫌なんだよね。」
ニコッと爽やかな笑顔を見せて、私に笑いかけた。
みんなが藤くんを慕うわけが、わかる気がする。
こんなに人の心を奪う笑顔。
私も思わずドキッとした。
あまり目を合わせられなくて、また顔をふせる。
すると、
「目あった瞬間さ。あからさまにそらされるの、けっこうショックなんだよ?」
そう言って、ハハッと笑った。
