藤くんは持っていた紙を渡した。
「2年A組、藤裕也の借り物は……?」
紙を開きながら読み上げる解説者。
「笑顔が可愛い女の子!」
マイクで読み上げられた瞬間。
藤くんを見ると、耳を真っ赤にして恥ずかしそうに顔を覆ってた。
「なんとこれは!大胆告白だーーー!」
さっきよりもザワザワとなりはじめ、校庭は大騒ぎになっていた。
「連れてこいって書いてあるからだろ。」
藤くんはボソッとつぶやくと、恥ずかしそうに頭をかいた。
「これは、借り物成功です!!」
そうして私たちは、ゆっくりとゴールテープに向かって歩き出し…
ゴールした。
「ごめん、なんか巻き込んで…。」
「ううん、大丈夫…。」
二人して恥ずかしくなりながら、まだ続く借り物走を待っていた。
沈黙の中、藤くんは私の腕をつかんだまま。
そして、競技が続く中。
私にだけ聞こえる小さな声で…
「ほんとにそう思ったから、ここ連れてきたんだ。」
