王様のいる学校





一番で借り物の紙を手にした藤くんは、その紙を手にしたまま固まっていた。


なんて書いてあるのか…


「藤、固まってるけど…」


「う、うん。大丈夫かな?」


そんな心配をしていると、藤くんは決意したようにまた走り出した。


しかも、


「藤くん、こっち向かってきてない?」


「だよね。」


確実に私たちの方へ一直線に進んできている。


そして止まった。

私の前でピタリと…。


「片岡、ついてきて。」


「え?」


耳をうたがい、聞き返す。


ついてきてって、もしかして借り物…


「もう、いいから!」


「え、ちょ……」


半強制的にグラウンドに連れ出され、グッと腕を掴まれた。


そして走り出す藤くんに腕をひかれて、とにかく走る。


悲鳴や不満の声や、いろんな声が響く中を……



「おーっと!一番に到着したのは2年A組!借り物があっていれば一位でゴールだ!」


ゴール手前の解説席へ、一番に到着した私と藤くん。