「藤くん、ごめん。もう行かなきゃ!借り物走頑張ってね!」
「え?ちょ、片岡!」
視線に耐えられなくなった私は、逃げるようにその場から離れた。
自分のクラス席に戻って振り返ると、一人になった藤くんは、すぐに女の子に囲まれていた。
「ごめんなさい、藤くん。」
女の子に囲まれるのが苦手。
前にそう言っていた藤くん。
私はその言葉を思い出しながら、申し訳なさそうにつぶやいた。
「なに、彼氏?」
突然後ろから聞こえた声に驚いて、大袈裟にビクッと反応した。
そして声のする方に顔を向けると、勝手に私たちのクラス席に座っていた矢野先輩だった。
「矢野先輩!何してるんですか、こんなところで。」
「何って、別に?お前が向こうから見えたからきただけだけど。」
「あ、そうなんですか。」
私を見てきてくれた。
些細なことに嬉しくて、少し顔がニヤついてしまう。
「で?あの爽やかくんは彼氏?」
なぜか不機嫌そうに指差す先に、藤くんが見えた。
