練習に行ってしまった藤くんの後ろ姿を見ながら、優希はふぅー。と息をはいた。
「ん?どうかした?」
そう聞くと、優希は私の顔をじっと見つめるなり、またため息をつく。
「え?なに?」
「ほんと。見ててイライラするほど、純粋だな。」
いきなり言い出した優希の言葉を、まったく理解できない私。
「…どういう意味?」
「べーつに。帰ろう。」
カバンを持って歩きはじめた優希のあとを、急いでおいながらまた聞く。
「ねえ、教えてよ!」
「やだ。自分で気づいて。」
「意地悪…。」
結局教えてくれなかった優希は、バイトだと言って途中で帰ってしまった。
それから一週間後。
よく晴れた体育祭日和。
「我々は、スポーツマンシップにのっとり……」
体育委員長からの宣言があり、じっと立っているだけでも汗が流れる暑さの中。
何十分もの開会式を終えて、やっと競技が始まろうとしていた。
