「おい、遅えんだよ。」


廊下に響きわたる低い声。


日常的となってしまったこの光景に、誰も口出しはしない。



私たちの一個上の矢野斗真先輩。


完璧な容姿を持つ、冷血な男。


彼は、この学園ゲームを楽しんでいる。

そして平気で人を足蹴にして、人の不幸を笑う。



「す、すみま、せんでした......」


怯えながら座り込んでいる、ターゲットにされた男子生徒。


パシリにされた結果、戻ってくるのが遅いという理不尽な理由でこんなことになっている。


「あ?聞こえねーんだよ、くそが。」


ゴンッ!という音と共に、座り込んでいた彼の頭を踏みつけた。



「ひどい……」


私は口を手で覆い、誰にも聞こえないくらいの小さな声でつぶやく。


それとは対象的に、黄色い声も響いた。


完璧な容姿を持つ矢野先輩は、女子からの人気は絶大でありファンも大勢いる。


「斗真さまー!」

そう叫ぶ女子たち。


そんな声は気にも止めず、矢野先輩は平然と頭を踏み続けている。