だけど、そのドキドキはあまり続かなかった。
「でもさ、やっぱお前とのラブシーンなんてありえないよな。てか想像つかねー。」
悪びれもなく、半笑いで言う先輩。
「え…?」
言葉を失った。
さっきのドキドキとした心の高鳴りは、一瞬で消えさる。
そうとも知らずに、先輩は気持ち良さそうに腕を伸ばして立ち上がった。
「まあ、好きな女ターゲットにして気ひくほど、俺奥手じゃねえし。」
屋上の手すりにもたれて、ニッとはにかむ。
そんな先輩に、私もニコッと返す。
だけど、そんなの作り笑い。
苦しくてたまらなかった。
そんな私の気持ちを悟られないように、必死で笑顔を作っていた。
なぜかキューっと締め付けられる胸。
おかしな感覚。
それがなぜなのか。
まだわかっていなかった。
今はただただ、先輩の言葉を聞いているのがつらかった。