「痛っ。」
突然ペチッと音がして、おでこが痛い。
いきなりのことに驚いて、とっさに起き上がる。
そして痛みのあるおでこを抑えた。
気づくとさっきまで握られていた先輩の手は、いつの間にか離れていた。
まだおでこは、じーんとしている。
「なに、顔真っ赤にしちゃって。」
いじわるそうにニヤニヤしながら、私の顔をのぞき込む。
からかってくる先輩に、少しムッとして目をそらした。
「なんだよ。さっきまで意識して、目つぶっちゃってたくせに。もしかして…」
そう言って、耳元にきて…
「キスでもされると思った?」
甘い声でささやいた。
いっそう顔は真っ赤になり、必死に首を横にふった。
それを見て、優しく微笑む先輩は、
「そんな真っ赤な顔してたら、説得力ねえぞ。」
人差し指で私のおでこをツンッとつついた。
先輩は、本当にずるい…
ふいに見せるこういう笑顔も甘い声も。
私をドキドキさせてからかってくる無邪気な顔も。
全てが私の気持ちを乱す。
