「へぇー、あんたが斗真さまのターゲットなの。」
「私たちが存分に楽しませてやるよ!」
私の髪をわしづかみ、数人の女子が囲んでいる。
矢野先輩に加勢しようと、私をいじめようとしているんだ。
「斗真さま親衛隊」
勝手にそう名乗っている女子が、この学校にはいる。
ターゲットが女子になったとなって、その親衛隊が動き出したのだ。
「覚悟しなさい!」
そう言って、髪をより強くつかむ。
「いた…い……」
その瞬間、ドスンッとすごく大きな音が響いた。
音のもとをたどれば……
桐瀬先輩だった。
しーんと静まりかえる。
桐瀬先輩の拳が壁につき、小刻みに震えていた。
しばらくすると、ゆっくりと手をおろして私たちを見ていう。
「あなたたち、勘違いしないでくれる?」
「え……」
私の髪をつかんだまま、親衛隊の人たちはビクッとする。
「これは、斗真と、その子のゲーム。部外者が関わることは許されない。次こんなこと見つけたら、わかってるわよね?」
そう言って未だ静まる廊下を、さっそうと歩いていった。
