「お前、馬子にも衣装だな。」
まったく思ってもいないことを、平気で言っていた自分に驚いた。
どんだけ素直じゃねーんだよ。
自分で自分に呆れた。
そうとは知らず、真に受けているりんごは頬をパンパンに膨らまして怒っていた。
「先輩!そういう時は、お世辞でも可愛いって言うもんなんですよ!」
きっとそれなりに、選んできてくれたんだろう。
完全にいつもとは雰囲気が違うし。
それにちゃんと可愛くも見えてる。
「俺は正直なんだよ、ばーか。」
相変わらず素直じゃないことを実感しながら立ち上がり、勝手に歩きだした。
そんな俺を引き止めるかのように、りんごは服を引っ張ってきて言った。
「先輩、どこ行くんですか?」
そういえば、誘われてオッケーはしたものの、場所は全く決めていないんだった。
「お前、どこ行きたいとかねーの?」
頭をかきながら、座っていたベンチに戻ろうとすると、
「映画!」
満面の笑みで即答した。
