〜矢野side〜
撫子とりんごが帰ってから、すやすやと寝ている広太を部屋に運んでいた。
すると、家のチャイムが鳴った。
父さんかなと思って確認もせずにドアを開けると、
「うおっ!」
ドアの前に立っていたのは父さんなんかではなく、なぜか髪がビショビショに濡れた、スウェット姿のルイだった。
「ねー、ドライヤー貸して。」
それだけ言うと、俺のことを素通りして勝手に家の中に入っていく。
幼馴染みだから、お互いの家を好きに行き来しているのはいつものことだ。
ルイが横を通った瞬間ほんのりとシャンプーの香りがして、不覚にもドキッとした。
「ドライヤーどこにあるのー。」
髪の毛をタオルで拭きながら、洗面所から顔を出している。
「ちょっと待てって。リビングで座ってろよ。」
男所帯だから、しばらくドライヤーなんて使ってない。
片っ端から引き出しを開けていくと、一番上の棚からようやく見つけ出した。