優希の足元に転がるペンケース。
顔を真っ赤にする彼女の前に、矢野先輩はゆっくり近づいていった。
「お前、いい度胸。」
全員が息を飲んだ。
今までのターゲットは、全て男。
しかし、今まさに、矢野先輩の目には優希しかうつっていない。
ビクビクした表情で、少し離れたところにいる私をじっと見ている。
助けて…
そう心の中で叫んでいるかのように。
「ちょっとちょっと、斗真くん。女の子はいくらなんでも……」
見かねて仲裁に入った、安藤秀司先輩。
「うっせえ、ターゲットは俺が決めんだよ。口出すんじゃねえ。」
矢野先輩の独壇場。
誰も口出しすることはできなかった。
安藤先輩もその言葉に呆れて、お手上げといった表情をうかべる。
そんな中、矢野先輩はまだ優希をみている。
そんな優希はチラチラと私の方を不安そうに見ていた。
優希の顔を見ていたら、黙っていることなんてできなくて……
「あ、あの!」
私はぎゅっと拳に力を入れ、精一杯の声をしぼりだした。
